欧米のガチャ規制議論 一筋縄ではいかない Loot Box 問題の争点

11月17日発売に発売された『Star Wars バトルフロント II』に端を発するルートボックス(ゲーム内ランダムアイテムボックス≒ガチャ)規制論争は、初期の混乱を経て今なお続いています。

発売・運営元の エレクトリックアーツ はバトルフロントの有料部分を即時削除したものの、発売の数日後にはベルギーのギャンブル規制委員会が「ルートボックスはギャンブルにあたる。EU全体でも規制するよう働きかける」と決定したという報道が相次ぎました。

欧米のルートボックス(ガチャ)規制議論 12月版

これは調査の意図を説明した部分を拡大解釈したための誤報だったと報じられています。

Belgium’s Justice Minister calls for loot box ban in Europe (Updated) | PC Gamer

欧米各国では依然として議論が続いているのですが、ギャンブルではないと明確にコメントするニュージーランドをはじめ、規制当局はLoot Box はギャンブルとは言えないとする立場が多いようです。

その一方で、(Loot Boxが法的にギャンブルかどうかに関わりなく)子ども(未成年)たちにはギャンブルと同じような影響があると懸念されています。

19日付けのイギリス紙 “The Sun” には、行動嗜癖を専門とする著名な Mark Griffiths ノッティンガム・トレント大学教授の「ビデオゲームの Loot Box によって、子どもはあなたの目の前でこうしてギャンブル依存になる」という記事も掲載されています。

How your kids are being turned into gambling addicts by video game “loot boxes” right under your nose

記事ではティーンエイジャーの脳は大人よりもリスクの高いものを好む傾向にあることに触れ、「ギャンブル」そのものではなく、「ギャンブルのような活動(gambling-like activities)」でも、後のギャンブル依存につながる可能性があると指摘しています。

 

「ギャンブルか否か」という問題と、「ギャンブルであろうがなかろうが子どもに対する影響への懸念」という2つの相があるため、別個に考える必要があります。

実は難しいギャンブルの定義

ノートPC お金

ガチャをギャンブルに準じるものとみなす人も散見されます。私もそう感じることが多々あります。

しかしガチャをギャンブルとすると、普通の人もギャンブルまみれということになってしまう。パチンコや競馬のことではないですよ。

 

たとえば正月の初売りセール。中に何が入っているか分からないまま販売される福袋はガチャと変わりません。

福袋にはいいものが入っているかもしれないし、そうでないかもしれない。むしろ中身が全くわからないだけに、福袋の方がギャンブル性が強いとも考えられます。

「福袋は意味が違うだろう」と思われるなら、トレカ(トレーディングカードゲーム)で考えてください。入っている可能性のあるものは明かされていても、そのパッケージに何が入っているかは分からない。

ソーシャルゲームのガチャをギャンブルとみなすのなら、福袋もトレカ、当然ながら宝くじもギャンブルとなります。未成年でも買える宝くじがギャンブル扱いにはなっていないのに、「当たり」でも現金で還元されるわけではないガチャをギャンブルとするのはかなり難しい。

ソーシャルゲームのガチャがトレカに比べて影響が大きいとしても、ギャンブルとして認定するのは非常に難しいことは分かります。

日本のガチャと Loot Box 規制議論の違い

ギャンブルルーレット

ルートボックス(Loot Box)は日本語訳するなら「略奪箱」。現在問題となっている「ルートボックス」は戦利品といった意味合いで報酬箱を意味します。

ルートボックスは遊んでいるうちに入手できる一方で、有料アイテムとして購入することができる点が批判されています。

ルートボックスを開けるとランダムでアイテムが出ることからガチャと同じものとして認識されています。

 

日本では2016年には536万人500万人以上がギャンブル依存の可能性があると報道されて話題になりましたが、欧米ではギャンブルが合法な国もあるため、成人のギャンブルは自由だと考えられています。

じゃあ何が問題なのかというと、対象が子どもであるという点にあります。子どもに『お金を賭けて高価(レア)なアイテムをひくギャンブル』を遊ばせていいのか?

これが規制論争のあらましです。

 

その一方で欧米のゲームのLoot Box規制は、日本のガチャ議論とは少し異なる部分も含んでいます。

子どもたちへの影響を懸念するギャンブル要素の問題の他、大人のプレイヤーからの疑問もあります。

それはガチャ規制議論の発端となったゲームタイトル Star Wars Star Battlefront 2 、そしてかねてから議論の対象となっていた Overwatch いずれも有料パッケージということ。

お金を払ってパッケージを購入した上に課金をさせるのはひどくない?という批判があります。DLC(ダウンロードコンテンツ)への懐疑とも言えます。

サービスを提供し続けるための継続的な収入源と考えるメーカーからすれば、「パッケージ + シーズンパス(期間プレイ権)」と「Loot Box」に違いはありません(Loot Boxを採用するほうが収益が上がるというデータはある)。

一方のユーザーは、「使えるアイテムを入手するため」にLoot Boxで手に入れなければいけないとなると、同じゲームを遊ぶのに追加で金を取られる気がする。

拡張パックやシーズンパスには異論がない(一部にはある)ことを考えると、サービスに対して金を払うことに拒否感があるわけでもないところに難しさがあります。

ゲームバランスへの懸念

「勝つためにお金を払う」、Pay to Winという言葉があります。金を出せば強くなって勝てるようになるゲームバランスになると、プレイヤースキルを競うガチの勝負が成立しなくなります。

ペイチャンネルやストリーミングサイトでは中継が行われている e-Sports という「ガチ」の勝負を見慣れたプレイヤーが興ざめしてしまうのは当然と言えば当然(すべてのゲームがそうなるわけではないので慣れの問題)。

Loot Boxのコンセプトは以前からありました。ゲームによってはバランスに影響があるようなアイテムを出すこともあったのですが、そのたびにプレイヤーの反発を受け、Loot Boxはゲーム性に影響しない「服や装備の外観を変えるアイテム」に限定することで落ち着いていました。

それがSW Battlefield2で「ギャンブル性」による子どもへの影響と「ゲームバランスへの懸念」が合わさってLoot Box 問題が再燃した形です。

争点は子どもへの影響

これまで見てきたように、 Loot Box 議論にはいくつかの異なる視点からの批判があります。

  • ゲームバランスへの懸念
  • ゲームを遊ぶ子どもへの影響
  • ギャンブルであるなら規制が必要とする考え
  • 有料パッケージを購入した上にさらにアイテムを購入させることが妥当なのか(ダウンロードコンテンツの問題)

このうち社会的な問題となるのが子どもへの影響=ギャンブル規制議論です。

Loot Boxがギャンブルか否かの判断は微妙なところがあります。

  1. 現実世界の現金での払い戻しがない
  2. (それが不要なものであれ)なにがしかはアイテムとして手に入る

という2点からギャンブルとみなすことが難しいためです。

Loot Box が法的にはギャンブルとみなされないとしても、それに準じる「当たるか外れるか」というギャンブル性にハマってしまう子どもたちへの影響も無視できない。

そうなると賭博法とは別の次元での議論となり、業界による「自主規制」か新たな立法かの選択になります。

立法で対応することになれば、日本のソシャゲーガチャにも影響が出るかもしれません。

欧米のルートボックス(ガチャ)規制議論 12月版